本記事では、Windows環境で dbt(data build tool)を使い始めるために必要なツールのインストール手順を一通りご紹介します。
Python/VSCode + 拡張機能/Git/dbt を順番にセットアップし、最終的に簡単な動作確認まで行うことで、「これから dbt を始めたい」という方が迷わず一歩を踏み出せるようにしています。
無料 dbt 環境 システム構成
最初にこの記事で紹介する 無料で構築する dbt 環境について紹介いたします。
dbt は有料版のクラウドサービスもありますが、無料版のコマンドラインツールもあります。
いきなり有料サービスはハードルが高いと思いますので、無料で入手できるツールでシステムを構成します。これでも十分利用価値が高いですからご心配無く。
システム構成は図のようになっています。

無料版の dbt はコマンドラインツールなのですが、Visual Studio Code の拡張機能 “Power User for dbt” を使えば GUI 操作で dbt を利用できてしまいます。
これらが全て無料で利用できてしまうのですからありがたいことです。
では早速、インストール作業を始めましょう。
ステップ1:Python のインストール
Python の公式サイトからインストーラーをダウンロード
まずは Python 本体を用意します。Windows 用の公式インストーラーは、python.org のダウンロードページ から取得可能です。
執筆時点で推奨される最新の安定版(3.11系または3.12系)を選びましょう。
インストール時のポイント1(”Add Python to environment variables” にチェック)
ダウンロードしたインストーラーを起動したら、必ずカスタム設定に入って「Add Python to environment variables(環境変数に追加)」にチェックを入れてからインストール開始してください。これを忘れると、コマンドプロンプトや PowerShell から python
コマンドが認識されず、以降の手順でつまずく原因になります。
ちなみにインストール時にこの設定を忘れてしまったら再度インストーラを起動して、設定変更することもできますので、忘れてしまった方はお試しください。

インストール時のポイント2(”Disable path length limit” を実行)
インストールの最後にオプションとして “Disable path length limit” を設定するボタンが現れます。
フォルダパスが深い場所でも Python を実行できるように、このボタンを押して設定した上でインストールを完了させます。
インストール確認コマンド(python --version
、pip --version
)
インストール後、Windows のコマンドプロンプトまたは PowerShell を開いて以下を実行し、バージョンが表示されれば成功です。
C:\>python --version
Python 3.11.9
C:\>pip --version
pip 24.0 from C:\Users\foo\AppData\Local\Programs\Python\Python311\Lib\site-packages\pip (python 3.11)
どちらもエラーなくバージョン番号が表示されれば、Python のインストールは完了です。
ステップ2:Visual Studio Code & 拡張機能 のインストール
この記事では Visual Studio Code をユーザーのフロントエンドとして活用します。というのも非常に便利な拡張機能があり、これがあればユーザはコマンド操作無く dbt を活用できるからです。
まずは、公式サイト からインストーラをダウンロードして Visual Studio Code をインストールします。
拡張機能: “Power User for dbt” をインストール
Visual Studio Code を起動すると、ウィンドウ左端に拡張機能のボタンがありますので、拡張機能のサイドウィンドウを出して、”Power User for dbt” を検索してインストールします。

設定は dbt でプロジェクトを作成してから実施しますので、ここでは一先ずここまででOKです。
ステップ3:Git のインストール
Git の役割と dbt との関係
dbt プロジェクトは複数の SQL ファイルや設定ファイルで構成されるため、変更履歴を管理する Git が不可欠です。Git を使うことで、チーム開発時のコードレビューや CI/CD への連携がスムーズになります。
Git for Windows のダウンロードとインストール手順
Git の公式サイト から「Git for Windows」をダウンロードし、インストーラーを実行します。インストールオプションは特に難しいものはありませんが、以下のポイントを押さえておくと安心です:
- エディタの選択:慣れているエディタがあれば選択(デフォルトの Vim でも可)
- PATH の設定:デフォルトで「Git from the command line and also from 3rd-party software」を選択
- 改行コード変換:特にこだわりがなければ「Checkout Windows-style, commit Unix-style line endings」を選択
Git Bash の使い方と基本的な初期設定(ユーザー名・メールアドレス)
インストール後は Git Bash(ターミナルエミュレータ)を起動し、以下のコマンドでユーザー情報を設定します。
git config --global user.name "あなたの名前"
git config --global user.email "あなたのメールアドレス"
これでコミット時の作者情報が正しく残るようになります。
インストール確認コマンド(git –version)
最後に、Git Bash またはコマンドプロンプトで以下を実行し、Git のバージョンが表示されることを確認してください。
C:\>git --version
git version 2.50.1.windows.1
ステップ4:仮想環境の作成と管理(venv)
なぜ仮想環境を使うのか?
Python パッケージをプロジェクトごとに分離して管理するため、システム依存やバージョン衝突を避けられます。dbt 以外のツールを同じ環境にインストールしても影響が出にくくなるのがメリットです。
仮想環境の作成と有効化(CMD / PowerShell / Git Bash対応)
プロジェクト用フォルダを作成し、その中で仮想環境を用意します。
重要!プロジェクト用フォルダ
プロジェクト用フォルダはここではユーザーのホームディレクトリに作成します。
このフォルダ内に後で dbt のプロジェクトも作成することになりますので、後々の運用を考えた場所に作成してください。
# プロジェクトフォルダを作成して移動(ここではユーザ名は "foo" )
cd C:\Users\foo
mkdir my_project_root
cd my_project_root
# 仮想環境の作成
python -m venv .venv
# 仮想環境の有効化(PowerShell の場合)
.venv\Scripts\Activate.ps1
# 仮想環境の有効化(CMD の場合)
.venv\Scripts\activate.bat
# 仮想環境の有効化(Git Bash の場合)
source .venv/Scripts/activate
有効化に成功すると、プロンプトの先頭に (.venv) のような表示が付きます。
(.venv) C:\Users\foo\my_project_root>
仮想環境の確認と無効化の方法
仮想環境が有効な状態で where python(または which python)を実行し、.venv 配下の実行ファイルが指されていれば正しく動作しています。作業終了後は、以下で仮想環境を無効化できます。
(.venv) C:\Users\foo\my_project_root>deactivate
C:\Users\foo\my_project_root>
仮想環境を無効化するとプロンプトの先頭が元に戻るので分かるかと思います。
ステップ5:pip のアップグレード
仮想環境内で pip を最新化しておくと、後のパッケージインストールで不要なエラーを防げます。
(.venv) C:\Users\foo\my_project_root>python -m pip install --upgrade pip
ステップ6:dbt-sqlserver のインストール
dbt の概要と dbt-sqlserver パッケージの選定理由
dbt 本体にはコア機能のみが含まれており、各データベースに接続するには専用アダプターが必要です。SQL Server 向けには dbt-sqlserver パッケージを使うことで、ODBC 経由の接続や方言に対応します。
pip install dbt-sqlserver の実行と完了確認
仮想環境が有効な状態で次のコマンドを実行します。これで dbt のコア機能と SQL Server への接続アダプターが同時にインストールされます。
(.venv) C:\Users\foo\my_project_root>pip install dbt-sqlserver
インストール中に依存パッケージが自動で取得され、数分で完了します。
dbt のバージョン確認コマンド(dbt –version)
インストール後、以下のコマンドでバージョン情報が表示されれば成功です。
(.venv) C:\Users\foo\my_project_root>dbt --version
Core:
- installed: 1.10.5
- latest: 1.10.5 - Up to date!
Plugins:
- fabric: 1.9.3 - Update available!
- sqlserver: 1.9.0 - Up to date!
At least one plugin is out of date with dbt-core.
You can find instructions for upgrading here:
https://docs.getdbt.com/docs/installation
まとめ:これで準備完了、次はプロジェクト作成へ!
これで、Windows 環境における Python・Visual Studio Code + 拡張機能・Git・dbt のインストールと基本確認が完了しました。
次回は、dbt init によるプロジェクト作成や profiles.yml の接続設定など、実際にモデルを動かすためのステップをご紹介します。お疲れさまでした!